【3章】Piece.28 付き合い

外は快晴。
しかし話の舞台は

最近リフォームされた自宅地下室。
各人の部屋が増え、そこにあるCaymの部屋。
そこへ来訪者が1人。
軽い音のノックでCaymが顔を出し
訝しげに眉をひそめる

「俺に客?」

嫌そうなCaymを前にtougaは頷く。
少し考えたが、Caymに来訪者と言われても限られている。
心当たりがあるのはアイツしかいない。
「―――通さんでいい、居ないって言っ」
「なんだよ、相変わらずつれねーなー」

気がつけば、tougaの背後にはValaferlが立ちひらひらと片手を上げている。
「何で勝手に入って来てんだよ!」

「俺だけだし、構わねえだろー?」
ニヤニヤCaymを見やる。
「そんな長話するつもりはねーし。
ちっとぐらい付き合えよ」
そう言いながらなぜかtougaの頭をぽんぽん叩いている。
Caymは頭を抱え、しばし考えた後に

「わーったよ…」
諦めて、肩を落とした。
どう足掻いたところで、Valafarのしつこさには勝てない。
ならば、ささっと済ませてお帰り頂こうという算段で。
「嬢ちゃん引き止めて悪かったな」

「お前もう戦士ギルドに行く時間だろ?
あとは俺らで平気だから行ってこいよ」
「うん。ヴァラさんごゆっくり」

「ゆっくりさせなくていいって」
あはは、と苦笑しつつ、tougaは部屋から去った。

「――――で、何の用だ?今回は」
「聞きたいことは色々あるんだが…
お前、今薬はどうしてんだ?」
「あ?
Leraieが用意してくれてんのを飲んでるが。」
「嬢ちゃ…Asherahもか?」
「いや、あいつは薬無しでも問題ないみたいだ」
「問題ない?」
「ああ」
Valafarは眉をひそめる。
「俺も詳しい理屈はわからん。
ただ事実として、再会してからあいつは服薬してないし、
薬の存在すら知らないはずだぞ」
「どーいうこった?
“アレ”を飲んでるから俺らは―――」

「その辺はLeraieが調べてるみたいだがな、まだ結論はでてねェんだ。
少なくとも現状"touga"は何の異常も見られないからな。
とりあえず経過観察…ってのがLeraieの指示だ」
Leraieの名前に、Valafarは不快感を示していた
「前も聞いたけどよ、本当に一緒に居て大丈夫なのか?」
肩をすくめ、渋々といった様子でCaymは答える。
「俺はアイツに全面的に協力してる、って訳じゃねーし、
薬が必要なのもそうだが」
前回は急いでいたのもありあまり話さなかったな、と思いだしながら
言葉を継ぎ足していく。
「AsherahはLeraieを頼れと"あっち"で別れる前に俺に言ったのもある。
それに―――」

不意にCaymが視線を外し、遠くを見つめる。
「Leraieを頼むとも言われたんだよ。
一体あいつの何を心配してんだか今でも全く判らねェ」
そこまで言い、Caymは内心考えていた。
これらは指示としてAsherahから確かに言われたことではある。
だが、それ以上に…"この場所"から離れがたい気持ちが強い。
以前Varafarlには『一緒に居なきゃならねえ理由が』と呟いたが、
本当は、"居なきゃならない"のではなく、
"居たい"というのが本心ではないだろうか。
あの時、最後まで居られなかった―――"彼女"の傍に。
Caymは俯き目を伏せる。
その様子にValafarlは顔をしかめ
「お前、今だにAsherahの言葉に縛られてるのか?」

沈黙。
「側にいるから、尚更なのかもしれんが」
Caymの様子にやれやれと頭を掻く。
「まあいい。
問題があまりねーなら、この前連絡した、
Gateを閉じる手伝いを頼めるか?」
「いいけどよ、動けるとしても俺は単独で動くことになるし、
あまり多くはいけないぞ?
精々帝都南方やれりゃ良いぐらいだと思うが」
「それでも十分に助かる。
俺らは帝都西方にまわる…ってそういや
CheydinnhalのGateがもう閉じてたな」
「ありゃtougaとそのお友だちがやったんだ。
俺も様子を見に行ったが、殆ど終わってたよ」
「嬢ちゃんが?」
「んー、あいつはそれなりに強くなっては来たが
あいつの友達が、中々腕の立つ奴みたいでな。
"touga"はそこそこだ。そこそこ。」
「そこそこ、ね。
やっぱ記憶がなくなって、力も失ったのか」

「いや、力自体は残ってるみてーなんだ
何度かAsherahの力や意識が“戻った”のは見た。…一体なんなのか」
「意識が戻るってことは、"touga"は別人格になる訳か?」
「そうだと思うんだけどな」
そうだと思う?
引っかかる言葉にValafarが首を傾げた。
「その辺もLeraieに任せたままなんでな。
判るまではどうにもできんし、変に手出しもできないだろ」
「それは確かにな…」
だがなぁ、と呻くValaferl。
「ま。もうすぐSitriが戻ってくるみてーだし、
とりあえずtougaのお目付けはあいつに任せていくさ。」

「それでいいなら、いいけどよ」
「何だよ。頼んだのはそっちだろ?」
何故か肩をすくめて見せるValafer。
「じゃ、まー頼むわ。俺らだけじゃ正直手が足りん」
「あいよ」
少し目を細めて、Caymは仕方なさそうに微笑する。
それに思わず驚いて、はは、と笑いをもらしたValaferlに

「…ンだよ?」
一瞬で不機嫌そうな表情に変わってしまうCaym。

「なんでもねー。
じゃ俺行くわ。2人待たしてるしな」
「おう。気をつけろよ」
ああ、と頷いて、Valaferlは去った。

「つーか…あいつらすっかり救世主になっちゃってまぁ。
似合わねェ」
Caymは一人苦笑を浮かべていた。


