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【3章】Piece.31 欠片を辿る

数日後の深夜。

ソファーでtougaが少しばかりうとうとしているところへ
研究の休憩と出てきたLeraieがやってくる。
休憩時以外はほとんど研究室に籠もっているために
こうやってまともに顔を合わせるのは久し振りな気がする。

「暖炉の前で寝ると、体調崩しますよ」

少し微笑みながら声を掛け
Leraieも向かい合うようにソファーに腰掛けた。

2405.jpg

ばつの悪そうな表情を浮かべるtouga

「ちょっと考え事してたら眠くなっちゃって」

言ってあくびを一つ噛み締めるtougaへと
僅かに首を傾げて何かあったのかと視線で問いかける。

「たいした事ではないんだけど」

話すほどの事だろうかと少し思案してから言葉を続ける。

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「数日前にCaymを町中で見かけた―――気がする」

「気がするとは?」

「はっきりそうだと言える自信も根拠も無いの。
遠目に見ただけで装備も違ったし、似た雰囲気の他人かも。
種族も同じだと思うけど…DarkElf自体珍しい訳ではないし」

tougaは目を伏せて光景を思い出していく。
遠めに見えた後姿、背丈、髪や肌の色、武具類…。
似ているといえば似ているが、すべてそこまで珍しい物ではない。
根拠とするにはあまりに弱い理由だ。

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「確かめたくて追いかけようとしたんだけど、
少し目を離した隙に見失っちゃって。
それ以来見てないから、ただの旅行者だったのかもしれないし…」

その言葉にLeraieの表情が僅かに曇る。

“追いかけようと”?
危険かどうかも判らない相手を。
気持ちは判るのだが、少々無謀な行動だ。

それにCaymが戻れば真っ先にLeraieやSitriに声を掛けるはずだ。
今のところ出かけて以来Caymを見ていない。
良く似た他人である可能性の方が高い。

「確証がなければ、似ている相手でも近寄らないのが賢明です。
どんな相手なのか判りませんし、人攫いや盗賊の類だったらどうするんです」

「あっ…。ごめんなさい、そこまで考えてなかった」

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そうだろうな。とLeraieは内心苦笑した。
危機意識の薄さは前からだったが、
いつかそれで大事に─── 一度なっては居るが ───巻き込まれてしまうような気がする。
小さくため息をつき、小さく出来ていた眉間の皺を緩めると
苦笑を浮かべ。

「程々にしてくださいね…?」

「……気を、つけます……」

言ってとても気まずそうにtougaは目を逸らすのだった。






その後久しぶりに2人でゆっくりと雑談を交わし
tougaが眠気に負けてそのままソファで寝込みそうになったため
2階の寝室へとLeraieが肩を貸して連れて行った。
久しぶりにゆっくり2人で話せたというのがよっぽど嬉しかったのか
笑みを浮かべたまま、おやすみと言ってtougaはすぐに睡魔に呑まれていた。

手のかかる人だな…とLeraieは内心思いながらも掛け布団をかけて
静かに部屋を後にしエントランスホールへと降りてきたところ
玄関扉が開き、外の冷たい空気と共にCaymがちょうど帰宅してきた。
大きな怪我もなく五体無事なようだ。“当然といえば当然”なのだが。

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「おかえりなさい。思ったより早かったですね」

「ああ。特に妨害も無かったからな」

Caymは軽く肩や首を動かし、疲れをほぐして見せるが
軽い倦怠感が残り続けている。
体力には自信があるCaymだったのだが
流石に連日動いていたせいで精神的な疲れも溜まっているようだ。
とはいえ、Gateを閉じる仕事自体はかなりスムーズに行えた
正直なところ、これはかなり予想外な結果だった。

「妨害が無いところをみると、やはりあえて此方を放置しているという事でしょうね」

「だな。1人の所を狙いに来ても良いもんだが監視されてる気配もない」

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何か理由があって動けないのか。
疑問が募るが答えが判る人間がこの場に居る訳でもない。
今は脅威になるものを一つずつ片付けていくしかないだろう。

ふむ、と少し悩んだ様子のLeraieだったが
もう一つ気がかりを思い出し、話を切り替える。

「――――そう言えば、貴方、
数日前にこちらに戻って来たりしていないですよね」

「帰ってきてねェな。何かあったか」

Caymへかいつまんでtougaの話を伝える。

「俺と似てる奴なぁ…遠目に見ただけなんだろ?」

「ええ。本人も別人かもしれないと言ってましたが」

「DarkElfなんて珍しい訳でもねーしなぁ…」

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遠目に見ても雰囲気が近かったのだろうか。
内容だけで言えばそこまで気にするような事柄ではない。
Caym自身にすぐ浮かぶ相手の覚えはないし、
今の情報だけでは“他人の空似”と言うほかない。

「貴方の方で何か気付いたら俺に。
特に問題はなさそうですが、用心に越したことはないでしょう」

「ああ。そうする」






Leraieと別れ自室へ入り、
Caymは一人ソファに腰掛けながら考え込む。

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自分に似ている?
考えても答えが出るとは思えなかったのだが
一つ気がかりな点がある。

touga同様にCaym自身もまた一時期の記憶がほとんど欠落しているのだ。
ただしtougaとは違い、時期はAsherahに出会う前までのもの。
その間に会った相手で居るのかも知れないがこの場合はお手上げだ。
何故失われているかも判らず、解決のしようがない。
しかし、もしその時期に会った相手であれば確実に“敵”だ。
それだけは間違いが無いのだが……。

また、以前やっていた仕事の関係上、
一般的な旅人であればどこかで見かけていてもおかしくない。
しかし、これといった覚えもなく。完全にお手上げだ。

「まァ、思い出せねェもんは無理に考えたってしゃーねェわな」

言って、目の前のカップの酒を一口。

「暫くは監視しといたほうが良さそうだな…めんどくせェ」

そう言いながらも、目は真剣そのものだ。
以前、胸騒ぎがしていたのにもかかわらず、
何も行動しなかった結果、tougaやLeraieが大怪我をした。
自分が怪我をする分には“いくらでも良い”
また失敗を繰り返したときにもっと悪い状況になるかもしれない。
ソレが一番危惧されることだ。
ささやかな不安や疑問の欠片も、警戒するべきなのだ。

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腕を組み考えを馳せる。
じっと静かに見つめる先は机の上の蝋燭。
小さく揺らぎ、吹くだけで消えてしまうその炎へと
守らなければならないものの姿を重ねているようだった――――。

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| RP日記 | 08:30 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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【3章】Piece.30 感覚・視線・予感

数日後、SitriがCheydinhalに戻ると同時に、Caymは大陸南方へと出発し
代わりにSitriが自宅待機となり
表向きは遊びに来たとの名目で時折tougaに付いて戦士ギルドに顔を出していたが

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事あるごとにClaudeと衝突する為、tougaに出入り禁止を通告されてしまう。

しかし、相も変わらずDuane、tougaやClaudeといったメンバーは
Gate破壊に度々街の外へと出掛けなくてはならなかった為に、
Sitriは遠目から偵察するなど色々苦労させられることになる。




―――そんなことは露知らず。



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Caymは淡々と南方のLeyawiin付近のGateを破壊していた。
一人だと言うこともあり1日に出来る量は流石にそう多くはないが
leyawiinやBravillといった南方の街を拠点にしながら活動を進める。

それから何日目かの夕闇。

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Gateを後にし、今日はこれぐらいで街へと戻ることを決め
近くの川で軽く顔を洗っていた時のことだ。

何かを感覚し、慌てて立ち上がる。

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目の前に何かあるわけでも、周りに何かが居るわけではない。
物凄く不快な何か。
肌の上を虫が這いまわるような不快感と共に感じたのは――悪意。

その一瞬だけで、感覚はすぐに消え去ってしまう。

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(何だ…?)

嫌な予感に煽られ、Caymは足早にその場を後にし
最も近いLeyawiinへと向かい始めた。




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翌日になっても、Caymが感じていた嫌な感覚は
どこか体の奥深くで蠢いていて
酷く落ち着かない気分のまま、朝早くに目が覚めた。

南方のGateはそう多くは無いが、まだいくつか気になる場所がある。
そこをすぐに終わらせて、Cheydinhalに戻ることを決め
手早く支度を済ませると、宿を後にした。


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一方その頃tougaは街中のベンチで

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のんびりだらけていた。

サボっているわけでは別段なく、
今日は待機組の配置だったため、どうにもやることがない。

Claudeは巡察組に配置されてしまって朝から居ないし、
Amyに魔法を教わろうとしたが、忙しい様子で聞くに聞けず、
Leraieは研究室に籠もりっきりで、
生きているかどうか心配なレベルで顔を見ていない。

そして、Caymも遠出してしばらく帰ってこない。

唯一近場にいるSitriは、戦士ギルドに来ないように先日言ったばかりだ。
どこか近場には居るのだろうけど、言った手前都合よく呼びつける訳にもいかず。
必然的に1人の時間が増える。

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非常に退屈だ。
かといって、ギルド付近で万が一に備えていなければならないのであり。

「素振りでもしようかな…」

言って立ち上がり

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なんとはなしに向けた視界に入った人物に目を留めた。

(…? Caym?)

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黒髪で僅かに見えたのはダークエルフによく似た肌色。
服装がいつもと違うのだが、雰囲気もよく似ている。

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(でも今は街から離れているはず…よね)

おそらく別人だろう、とは思うのだが
とても気にかかる。
不用意にうろつくべきではないのだし
Caymなのなら帰ってきてから聞いても遅くない―――
そうは思うのだがどうしても“今追わなければ”という気持ちが湧き立つ。

迷っている間にその姿は噴水広場から

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橋を越えて街のはずれへと向かっていってしまう。
意を決めてそれを追いかけようと走り出したが

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「―――どこいくのー?」
「え」

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よく知った声に驚いて振り返れば
巡察に向かったはずのClaudeが、首を傾げている。

「巡察にいってたんじゃ」
「行ってたよ? 帰ってきたとこ」
「ん、そっか」

再度先ほどのダークエルフを探すも、見失ってしまっていた。
Caymはいま街には居ないはずなのだし、
やはり他人のそら似かなと改めてClaudeに向き直る。

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「早かったのね」
「うん。町の周りはもう大分落ち着いたかなー。
そうポンポン増えるとも思えないし、しばらくは大丈夫だと思うよ」
「それなら一安心ね」

「で、何かあったの?ここまで来て。お出迎え?」

茶化すように笑んでみせるが、全く気にした様子もなく

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「ちょっと…知り合いに似てる人が居たから、
まさかと思って声かけようと思ったんだけど、見失っちゃった」

さらっと流されたのに肩をすくめながらも、Claudeは申し訳なさそうに

「あ、それはごめんね?…でも、似てる人?」

少し思案し、tougaは視線を橋の向こうに向ける。

「Caymに似てて。
遠方に行ってるから、今は町には居ないはずだし、
他人のそら似だとは思うんだけど」

けど。

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(妙に気になったのは、何故だったのかな)

見失った先を見つめるtougaをClaudeは見つめ
思案顔を浮かべつつ

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「んー。その、Caymさんだったなら、声かけてくれるだろうし、
別人だったんじゃないかな…?」
「うん、きっとそうよね」

言って、tougaは一つ息をついて表情を明るく変え
Claudeはほっとしたように微笑を浮かべる。

「それよりねー、今日は色々あってね」

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「どうしたの?」
「Oblivionで戦ってた時にね、もちろん教官とかも一緒だったんだけど、
手元が狂って剣を弾き飛ばされちゃって―――」

会話を切り替え、二人連れだってギルドへと軽い足取りで向かい始めたが


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静かな対岸の視線には気付くことなかった。

| RP日記 | 04:07 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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【3章】Piece.29 誰が為、何の為。

別の日。

「もっと何か、出来ることはないかなぁ」

3-29


戦士ギルドのバルコニーから路地を眺めてtougaはぼやく。
tougaとClaudeは待機組となっており
訓練やら力比べにも飽き、バルコニーですっかりだらけてしまっていて
雑談がてらの悩み相談…と相成った。
相談というか、tougaが思いつめたようにぼやいたからだが、
それを気にすることなく、Claudeは答える。

3-29

「何かって、今でも十分やってるんじゃない?
退屈しのぎだった手合わせだって
最近じゃ僕もうかうかしてられないぐらいだし」

「いやいや、まだ全然追いつけそうにないよ」

乾いた笑いで否定してから、ふっと表情が沈む。

3-29


「――――どう頑張っても、追いつけそうにないの」

同じことを2度言ったように聞こえたそれは
それぞれ別の人間を指していることだとClaudeは感じた。
後者はおそらく、一番追いつきたい相手を浮かべたのだろう。
この場には居ない、誰かに向けられた言葉。

やれやれ、と半分は呆れつつも

「やってみないことには判らないさ。
よく言うけど、腕があるだけが強さじゃないものだからね」

Claudeはフォローを入れてみる。
それに苦々しくtougaは微笑を返してその場に座り込みながら

「ま、ね。私に剣以外で出来ることがあれば自信もつくんだけど」

言って、肩をすくめる。

それは確かにそうだな、とClaudeは若干言葉に詰まった。
確かにtougaは種族のおかげか近接戦闘のセンスはそこそこある。
しかし、今までそれ以外に目がいっていなかったのか
他に得意といえる物が何も無い。
弓や魔法といった戦闘特技もなければ
錬金術ができるといった生活特技すらないのだ。
簡単に言えば、近接バカだ。
とはいえ、かくいうClaudeも似たようなもので、苦笑を浮かべた。

3-29

「ううん……。
まあ僕もそんな自慢できるような事がないから
アドバイスしにくいんだけど、
手っ取り早いのは身近な人から教われそうなやつかな。
たとえばそうだな―――回復魔法とか?」

「回復…」

「生まれによって適性がない場合もあるけど
基礎の回復魔法ぐらいなら扱える戦士も多いからね。
まー、僕は魔法に適性がないし
魔法は気が向かなくて全く教わらなかったから
君に教えたり出来ないのが残念だけど」

「確かに、少しでも怪我の回復が出来るのは強みになるよね」

(回復…Amyに話をしてみようかな)

touga考え込むように唸ったところで、ベランダの扉が開く。

「いたいた。こちらに居ましたか」

Claudeがきょとんとした顔で現れた姿に目をやれば

3-29

本日は仕事で外回りに出ていたはずのDuaneだ。

「教官?今日は外回りだったんじゃ」

「最近は教官してないですけどね…
ギルドマスターから2人へ直々に仕事の依頼を言付かりまして」

3-29

「仕事?」
「私達に?」

きょとんと2人は顔を見合わせた。



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「ふー…さすがにちっと堪えるな」

3-29

Caymは首をひねり、ゴキゴキと鳴らす。

Valaferとの話があった数日後。
彼は1人、Cheydinhal近場のGateを閉じに赴いていた。

SitriがまだCheydinhalに来ていない以上、あまり遠くまで向かう事も出来ない為、
とりあえずは近場を…という訳だったのだが。

3-29

思ったよりも広範囲に点在していた為に探すのだけでも骨が折れる。
その上数もそれなりにあったので、片っ端から回っていたものの
気づいたら空に星が瞬き始める時間で。

ふと、足を止める。

(いくつか、俺が向かう前にもう閉じられていたのは気にかかるが)

Knight of the Thornのぼっちゃん達か?

可能性としてはなくもないが、それほど腕が立つ訳でもなかったように思う。

ほかの可能性としてあり得るといえば
戦士ギルドの人員。
聞いたところによると、Cheydinhal付近の哨戒にあたってはいるようだし
それなりの手勢も居るだろうが――

「まさかな…」

などと、Cheydinhalに向かう途中で、思い耽っていたあたりで。

「ん?」

3-29

見知った姿に、思わず目を凝らす。
視線に気づいたようで、その相手は振り返り。

3-29

「あ」

思い切り指を差され、やれやれとCaymは肩をすくめた。
いきなり人を指さすのは行儀が悪い。

見ればtougaと、Claude、Duane。
なにか少し話した後、tougaが駆け寄ってくる。

「やっぱお前らだったか」

「何のこと?」

3-29

Caymの傍まで来て、一度振り返ってDuane達に手を振ってから
再度Caymに向き直る。

「いや、OblivionGateがいくつか俺がやる前に閉じられてたからな…」

「あ、うん。ギルドに依頼がきたみたいで。」

「なるほどな。
つか、あいつらと一緒に行かなくてよかったのか?」

すでにDuane達はCheydinhalへと去って行ってしまっていた。

「報告は2人がしてくれるから、Caymと一緒に帰っていいって」

(…酒場でも行くつもりだったんだが、いいか。後回しでも)

後頭部をかきつつ、やれやれとため息をついた。




「しっかし、お前らもGate閉じに駆り出されてるのか」

「うん。この前の一件で、領主様が名前覚えてくれたみたいで…
名指しされちゃったのもあるけど、ギルド人員に依頼が来てるんだって。
全然人手が足りないから、みんな駆り出されてる」

3-29

そりゃそうか、とCaym。
OblivionGateの量は、少し前とは比べ物にならないぐらい
街の周辺に多数出現していた。
放置すればどうなるかなど明白だ。
かといってその辺の村人が入った所で
Gateの要となる塔に辿り着けすらしないだろう。
ただでさえ少数で突入するのは危険だろうし
戦力として期待できるギルドの人間が駆り出されるのは道理だ。

「まー……あんま目立つなよ」

あっ、と気付いたように足を止め。

3-29

「―――そういえばそっか」

…。

自分も狙われてるって自覚あんのか?と、
Caymは叩きたくなる気持ちを辛うじて抑えた。
別に叩いても良かったのだが、目の前に現れた人物のせいだ。

3-29

「おや、おかえりなさい」

ちょうど雑貨屋から出てきたLeraie。
それへtougaが「ただいまー」と駆け寄る。

「買い出し?」

「ええ。ちょっと足りなかったもので。
今日はCaymと一緒だったんですか?」

3-29

「いや、俺とは街の近くで合流しただけだ」

肩をすくめて見せるCaymに
ああ、なるほど。とLeraieは頷いてから、少し困り顔を浮かべ

「俺も今やってる事が終われば手伝いもできるんですが…」

「ううん、大丈夫じゃないかな、たぶん。
ある程度あっちの世界のことはClaudeと私で教えられたし
ギルドもそうだけど、Brumaの衛兵の人たちも動いてくれてるみたい。
って、そういえばCaymもGate閉じ―――」

3-29

tougaが振り返ると、そこにはもうCaymの姿は見当たらず

「あれ」

きょろきょろと見回すが、それらしい姿もない。

「はは。まあ飲みにでも行ったんでしょう」

「あ、そっか…。邪魔しちゃったかな」

3-29

「そんなことはないと思いますよ。
アイツは一度帰宅してからでも飲みに行こうとか考えてたと思いますし」

お酒がないと発狂しちゃうかもしれませんからね、と
Leraieは悪戯っぽく笑ってみせた。




---------------



3-29


「――――今日はちょっと遅めだったじゃない」

「まァなー」

酒を一口含んでからカップを置くと、Caymは息をつく。

「なぁに?いつもより疲れた顔してるわよ?」

「んー。ちっと頑張って来たからな」

「あら。ここ最近暇そうにしてたのにね」

「うっせ、ほっとけ」

Caymは頭で両手を組み、背もたれに身を預けながら天井を眺め遠くを見つめる。



「なァんで、頑張ってんだか…」

Valaferlに頼まれたからとはいえ、そこまで働く理由などCaymにはないのだ。
世界の破滅だの崩壊だの、そんなことには興味がない。滅ぶのならその程度の世界だったというだけで。
なのに、何故。

「アンタ、今度例の子も連れてきなさいよ」

「んあ?」

「頑張ってんのはその子の為なんじゃないの。
ちょっと見てみたいわよ」

「はぁ?!」

「んな…違うっつの、頼まれた仕事を手伝ってるだけなんだよ俺は」

「気乗りしない仕事まで頑張るようなタマじゃないでしょ、アンタ」

「ない。本当にそういうんじゃねーから」

「ふぅん?」

明らかに面白がっている。
どうして女というやつはこうなんだ。
すぐに色恋沙汰と絡めて話をしたがる。

3-29

「勘弁してくれよ。アイツは唯の同居人であって
それ以上でも以下でもねェし
それ以上にもそれ以下にもなるつもりもねェよ」

「そ。まぁそう言うことにしといてあげるわ。
でもまー、たまには他の人も連れてきなさいよ
アンタ1人だけで毎回飲んだくれてると
本当に寂しい子に見えるわよ」

「うっせ」

ふてくされてそっぽを向く。

(…そーいや、アイツ酒飲めんのか?)

酔ったらどうなるのか、ちょっと見てみたい気もする。

「―――ま、気が向いたら連れてきてやるよ」

3-29

そう言うと、女将は嬉しそうに顔を綻ばせた。

| RP日記 | 00:07 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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【3章】Piece.28 付き合い

3-28

外は快晴。

しかし話の舞台は

3-28

最近リフォームされた自宅地下室。
各人の部屋が増え、そこにあるCaymの部屋。
そこへ来訪者が1人。

軽い音のノックでCaymが顔を出し
訝しげに眉をひそめる

3-28

「俺に客?」

3-28

嫌そうなCaymを前にtougaは頷く。

少し考えたが、Caymに来訪者と言われても限られている。
心当たりがあるのはアイツしかいない。

「―――通さんでいい、居ないって言っ」

「なんだよ、相変わらずつれねーなー」

3-28

気がつけば、tougaの背後にはValafarが立ちひらひらと片手を上げている。

「何で勝手に入って来てんだよ!」

3-28

「俺だけだし、構わねえだろー?」

ニヤニヤCaymを見やる。

「そんな長話するつもりはねーし。
ちっとぐらい付き合えよ」

そう言いながらなぜかtougaの頭をぽんぽん叩いている。
Caymは頭を抱え、しばし考えた後に

3-28

「わーったよ…」

諦めて、肩を落とした。
どう足掻いたところで、Valafarのしつこさには勝てない。
ならば、ささっと済ませてお帰り頂こうという算段で。

「嬢ちゃん引き止めて悪かったな」

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「お前もう戦士ギルドに行く時間だろ?
あとは俺らで平気だから行ってこいよ」

「うん。ヴァラさんごゆっくり」

3-28

「ゆっくりさせなくていいって」

あはは、と苦笑しつつ、tougaは部屋から去った。







3-28

「――――で、何の用だ?今回は」

「聞きたいことは色々あるんだが…
お前、今薬はどうしてんだ?」

「あ?
Leraieが用意してくれてんのを飲んでるが。」

「嬢ちゃ…Asherahもか?」

「いや、あいつは薬無しでも問題ないみたいだ」

「問題ない?」

「ああ」

Valafarは眉をひそめる。

「俺も詳しい理屈はわからん。
ただ事実として、再会してからあいつは服薬してないし、
薬の存在すら知らないはずだぞ」

「どーいうこった?
“アレ”を飲んでるから俺らは―――」

3-28

「その辺はLeraieが調べてるみたいだがな、まだ結論はでてねェんだ。
少なくとも現状"touga"は何の異常も見られないからな。
とりあえず経過観察…ってのがLeraieの指示だ」

Leraieの名前に、Valafarは不快感を示していた

「前も聞いたけどよ、本当に一緒に居て大丈夫なのか?」

肩をすくめ、渋々といった様子でCaymは答える。

「俺はアイツに全面的に協力してる、って訳じゃねーし、
薬が必要なのもそうだが」

前回は急いでいたのもありあまり話さなかったな、と思いだしながら
言葉を継ぎ足していく。

「AsherahはLeraieを頼れと"あっち"で別れる前に俺に言ったのもある。
それに―――」

3-28

不意にCaymが視線を外し、遠くを見つめる。

「Leraieを頼むとも言われたんだよ。
一体あいつの何を心配してんだか今でも全く判らねェ」

そこまで言い、Caymは内心考えていた。
これらは指示としてAsherahから確かに言われたことではある。
だが、それ以上に…"この場所"から離れがたい気持ちが強い。
以前Valafarには『一緒に居なきゃならねえ理由が』と呟いたが、
本当は、"居なきゃならない"のではなく、
"居たい"というのが本心ではないだろうか。
あの時、最後まで居られなかった―――"彼女"の傍に。

Caymは俯き目を伏せる。
その様子にValafarは顔をしかめ

「お前、今だにAsherahの言葉に縛られてるのか?」

3-28

沈黙。

「側にいるから、尚更なのかもしれんが」

Caymの様子にやれやれと頭を掻く。

「まあいい。
問題があまりねーなら、この前連絡した、
Gateを閉じる手伝いを頼めるか?」

「いいけどよ、動けるとしても俺は単独で動くことになるし、
あまり多くはいけないぞ?
精々帝都南方やれりゃ良いぐらいだと思うが」

「それでも十分に助かる。
俺らは帝都西方にまわる…ってそういや
CheydinnhalのGateがもう閉じてたな」

「ありゃtougaとそのお友だちがやったんだ。
俺も様子を見に行ったが、殆ど終わってたよ」

「嬢ちゃんが?」

「んー、あいつはそれなりに強くなっては来たが
あいつの友達が、中々腕の立つ奴みたいでな。
"touga"はそこそこだ。そこそこ。」

「そこそこ、ね。
やっぱ記憶がなくなって、力も失ったのか」

3-28

「いや、力自体は残ってるみてーなんだ
何度かAsherahの力や意識が“戻った”のは見た。…一体なんなのか」

「意識が戻るってことは、"touga"は別人格になる訳か?」

「そうだと思うんだけどな」

そうだと思う?

引っかかる言葉にValafarが首を傾げた。

「その辺もLeraieに任せたままなんでな。
判るまではどうにもできんし、変に手出しもできないだろ」

「それは確かにな…」

だがなぁ、と呻くValafar。

「ま。もうすぐSitriが戻ってくるみてーだし、
とりあえずtougaのお目付けはあいつに任せていくさ。」

3-28

「それでいいなら、いいけどよ」

「何だよ。頼んだのはそっちだろ?」

何故か肩をすくめて見せるValafer。

「じゃ、まー頼むわ。俺らだけじゃ正直手が足りん」

「あいよ」

少し目を細めて、Caymは仕方なさそうに微笑する。
それに思わず驚いて、はは、と笑いをもらしたValaferlに

3-28

「…ンだよ?」

一瞬で不機嫌そうな表情に変わってしまうCaym。

3-28

「なんでもねー。
じゃ俺行くわ。2人待たしてるしな」


「おう。気をつけろよ」

ああ、と頷いて、Valafarは去った。








3-28

「つーか…あいつらすっかり救世主になっちゃってまぁ。
似合わねェ」

Caymは一人苦笑を浮かべていた。

| RP日記 | 02:11 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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【3章】Piece.27 Bruma Gate

場所はCloud Ruler Temple。

クヴァッチの英雄と呼ばれ始めた三人は
次の役目に向かうべく、話していた

「まず…Bruma前のゲートか」

「そうだね。
だけど他のゲートも早めに片付けたいとこだけど」

Allies for Bruma

「簡単に行きゃいいけどな。一応Caymにも連絡はしたし
暇なら近場のGateに向かってくれると思うが」

「けど、Caym達も色々問題有り」

抑揚の薄い声でEurynomeが言う。

Megairaが近付いてきたというし
付け狙われるのは間違いないだろう。

“誰”を標的にしてるのかまでは判らないが
彼らがバラけるのも良くはないだろう。

「まーな。
Megairaといい、Leraieが居るといい…」

Leraieが過去携わっていた仕事をValafarは思い出す。
それがあるから、信用はできないし
何も思わずに居られる訳がない。
それはCaymやAsherahも同じはず…

何故、一緒に行動するのか?―――それだけが謎だ。
Asherahが記憶を無くして居るとはいえ…

(―――俺が考えても仕方ないか―――)

ばりばりと、Valafarは頭を掻く。
今は自分たちが出来る仕事をこなす。
それが、この土地で生き続ける為に必要なのだから。



彼らが今回寺院に呼び出されたのは、
“Mythic Dawn”の秘本"Mysterium Xarxes"の解読に若干の進展があったのが発端だった。

Allies for Bruma

「分かったよ。
Mysterium XarxesはCamoran's Paradiseへのゲートであり鍵だったんだ。
ある意味、この本こそがCamoran's Paradiseなのだ」


「Mankar Camoranは、自分自身をXarxesに呪縛させて、
Paradiseを創ったんだ。
詳しくは言えないが、暗黒の儀式を使ってね。」


「外からでもゲートを開くことは可能だが。
一時的に私自身を本に呪縛させれば、できないこともない。」


「だが、私は可能だと信じている。
引き続き、呪縛の儀式に必要となる
マジックアイテムの解読作業を続けるよ。」



そして、Martinと話しているところへ
Bruma前にゲートが開いていると連絡があった。
どうやら各街の付近にOblivionGateが開き始めてるという。

まずはBrumaのゲートを片付ける必要がある上、
Brumaガード隊長のBurdたっての希望で、Gateの閉じ方を教わりたいとの要請まで来ている。

「だっりぃ…けどしゃーねぇわな…」

Allies for Bruma

などと、ぶつくさValafarが文句をいいつつも
3人はBrumaへと向かう。



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Bruma前では、すでにBurd隊長を筆頭とした
ガード達が防衛線を張っていた。

Allies for Bruma

「…連れてくのはかまわねーが…」

ガード達を遠巻きに見ながら話す。

Allies for Bruma

「絶対に守れるとも限らんし、
Megairaがこっちに来ないとも限らないんだよな…」

「来たら倒す、それだけ」

関心のないように、Eurynomeは言い捨てる。
Valafarはやれやれと、肩をすくめ

「まー、そうだけどよ
一般人と一緒じゃ、制限せにゃならん」

「別に連れていかなくとも良いんじゃないのかい?」

至極面倒そうなDarkness。
うーん、とValafarは頭をかきながら

「だが、ゲートに関して詳しい人間を
増やしておくのは後々使えるんだよ」

「彼らも危険は承知の筈」

「だといいが…」

Allies for Bruma



隊長のBurdは、危険は承知の上、
進退の指示もValafarに委ねるというので
不安を感じつつも3人は承諾し、共にGateへ突入する―――。


Gateの中は、大量のDaedraであふれていた。

Allies for Bruma

露骨に嫌そうに顔をしかめたValafar達だったが、
Valafar、Darkness、Eurynomeの3人の腕は中級Daedraであっても引けを取らない。

Burdも善戦していたが、ほとんど3人の活躍で、あっという間に中央の塔内部へと到達する。

内部では人型の中級にあたるらしいDaedraが大量に待ち構えていたのだが
これでもやはり彼らの相手にはならなかった。

あっさりと片付き、Valafarがふと思い耽るように固まる。

「ヴァラ?」

表面上まったく変化がないようにみえるEurynomeが
その顔を見上げる。

Allies for Bruma

「何度来ても、苦手だな」

不意に呟いた言葉に、Eurynomeは首を傾げる。

「エリーみたいに、真面に感じなきゃ良いんだろうが、
この世界を感じるたびに―――気が狂いそうになる」

Allies for Bruma

「赤い空、赤い地面、赤い壁、赤い窓」


「蠢く、絡み付く、不快な空気とその凡て」


「衝動、ここにあるのは衝動だ。狂気、破壊の…」



ざわざわと、Valafarの言葉が波立つ。


Eurynomeがそれに反応するように、手の剣を握り直し――



「―――ここで"終わりにする"かい?」

Allies for Bruma

Darknessが殺気をValafarへと向け、
Eurynomeもまた視線を鋭くする。

Allies for Bruma

Valafarはやや沈黙をし、

「……駄目だ。ここで終わる訳にはいかない。」

そう言って、表情を緩めた。

Darknessは横目でそれを見ると、安心したように息をつく。

「そうかい。
ならしっかりしといてくれよ。
僕だってこんなところで終わるのはつまらないからね」

一瞬視線を合わせ、互いに剣を収める。
Eurynomeもまた、それに合わせ剣を収めた。


若干先行していたBurd隊長は、彼らのやりとりを聞いていなかったようで
「どうかしたのか?」と心配そうに戻ってきていた。

そうしたやり取りの後。

Allies for Bruma

あっさりとBrumaのGateはBurd隊長が見守る前で、閉じられた。



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Cyrodiilへと戻ってくると、辺りには雪が舞い始めていた。

Allies for Bruma

Oblivion Gateによって変質していた空も
今は鉛色になり、深々と雪を降らせている。

ほっとした様子でBurdは3人を見やると

Allies for Bruma

「お供できて光栄だった。
これで、今後新たなゲートがBruma付近に出現しようとも、
我が衛兵隊で対処できよう」


そう礼をいい、Brumaへと去って行った。



「さっみぃ…」

Valafarがボヤキながら白い息を吐く。

Allies for Bruma

「意外と大した問題もなく、終わったね」

「Megairaの気配もなかった」

「奴の狙いは純粋に、
Caymや嬢ちゃん達って事になるな、やっぱ」

Megairaが来るようであれば、Valafar達で始末することも考えたのだが
全くといっていいほど、敵が差し向けられた気配はなかった。
良かったといえば良かったのだが、些か気になる事ではある。

Allies for Bruma

「…Caym、Gateに向かう?」

「どうだかな…」

「あの中で単独で戦えるほど、あの人は強いのかい?」

「…そうだな。俺なんかよりよっぽど強い力があるんだ、あいつは。
だが、俺らと同様にあまり他人に見せられるもんじゃないからな」

「ふぅん。まあ、それなりに一緒の僕ですら
君たちの"アレ"に未だに慣れれ無いぐらいだしねぇ」

「慣れられる奴の方が珍しいんだよ。
普通、本能的に恐怖を感じるもんなんだから」

「ふうん」と興味なさげにDarknessは視線を外す。

Allies for Bruma

「…ま、ちょっとCaymのところに寄ってくかねえ」



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