【3章】Piece.31 欠片を辿る
数日後の深夜。
ソファーでtougaが少しばかりうとうとしているところへ
研究の休憩と出てきたLeraieがやってくる。
休憩時以外はほとんど研究室に籠もっているために
こうやってまともに顔を合わせるのは久し振りな気がする。
「暖炉の前で寝ると、体調崩しますよ」
少し微笑みながら声を掛け
Leraieも向かい合うようにソファーに腰掛けた。

ばつの悪そうな表情を浮かべるtouga
「ちょっと考え事してたら眠くなっちゃって」
言ってあくびを一つ噛み締めるtougaへと
僅かに首を傾げて何かあったのかと視線で問いかける。
「たいした事ではないんだけど」
話すほどの事だろうかと少し思案してから言葉を続ける。

「数日前にCaymを町中で見かけた―――気がする」
「気がするとは?」
「はっきりそうだと言える自信も根拠も無いの。
遠目に見ただけで装備も違ったし、似た雰囲気の他人かも。
種族も同じだと思うけど…DarkElf自体珍しい訳ではないし」
tougaは目を伏せて光景を思い出していく。
遠めに見えた後姿、背丈、髪や肌の色、武具類…。
似ているといえば似ているが、すべてそこまで珍しい物ではない。
根拠とするにはあまりに弱い理由だ。

「確かめたくて追いかけようとしたんだけど、
少し目を離した隙に見失っちゃって。
それ以来見てないから、ただの旅行者だったのかもしれないし…」
その言葉にLeraieの表情が僅かに曇る。
“追いかけようと”?
危険かどうかも判らない相手を。
気持ちは判るのだが、少々無謀な行動だ。
それにCaymが戻れば真っ先にLeraieやSitriに声を掛けるはずだ。
今のところ出かけて以来Caymを見ていない。
良く似た他人である可能性の方が高い。
「確証がなければ、似ている相手でも近寄らないのが賢明です。
どんな相手なのか判りませんし、人攫いや盗賊の類だったらどうするんです」
「あっ…。ごめんなさい、そこまで考えてなかった」

そうだろうな。とLeraieは内心苦笑した。
危機意識の薄さは前からだったが、
いつかそれで大事に─── 一度なっては居るが ───巻き込まれてしまうような気がする。
小さくため息をつき、小さく出来ていた眉間の皺を緩めると
苦笑を浮かべ。
「程々にしてくださいね…?」
「……気を、つけます……」
言ってとても気まずそうにtougaは目を逸らすのだった。
その後久しぶりに2人でゆっくりと雑談を交わし
tougaが眠気に負けてそのままソファで寝込みそうになったため
2階の寝室へとLeraieが肩を貸して連れて行った。
久しぶりにゆっくり2人で話せたというのがよっぽど嬉しかったのか
笑みを浮かべたまま、おやすみと言ってtougaはすぐに睡魔に呑まれていた。
手のかかる人だな…とLeraieは内心思いながらも掛け布団をかけて
静かに部屋を後にしエントランスホールへと降りてきたところ
玄関扉が開き、外の冷たい空気と共にCaymがちょうど帰宅してきた。
大きな怪我もなく五体無事なようだ。“当然といえば当然”なのだが。

「おかえりなさい。思ったより早かったですね」
「ああ。特に妨害も無かったからな」
Caymは軽く肩や首を動かし、疲れをほぐして見せるが
軽い倦怠感が残り続けている。
体力には自信があるCaymだったのだが
流石に連日動いていたせいで精神的な疲れも溜まっているようだ。
とはいえ、Gateを閉じる仕事自体はかなりスムーズに行えた
正直なところ、これはかなり予想外な結果だった。
「妨害が無いところをみると、やはりあえて此方を放置しているという事でしょうね」
「だな。1人の所を狙いに来ても良いもんだが監視されてる気配もない」

何か理由があって動けないのか。
疑問が募るが答えが判る人間がこの場に居る訳でもない。
今は脅威になるものを一つずつ片付けていくしかないだろう。
ふむ、と少し悩んだ様子のLeraieだったが
もう一つ気がかりを思い出し、話を切り替える。
「――――そう言えば、貴方、
数日前にこちらに戻って来たりしていないですよね」
「帰ってきてねェな。何かあったか」
Caymへかいつまんでtougaの話を伝える。
「俺と似てる奴なぁ…遠目に見ただけなんだろ?」
「ええ。本人も別人かもしれないと言ってましたが」
「DarkElfなんて珍しい訳でもねーしなぁ…」

遠目に見ても雰囲気が近かったのだろうか。
内容だけで言えばそこまで気にするような事柄ではない。
Caym自身にすぐ浮かぶ相手の覚えはないし、
今の情報だけでは“他人の空似”と言うほかない。
「貴方の方で何か気付いたら俺に。
特に問題はなさそうですが、用心に越したことはないでしょう」
「ああ。そうする」
Leraieと別れ自室へ入り、
Caymは一人ソファに腰掛けながら考え込む。

自分に似ている?
考えても答えが出るとは思えなかったのだが
一つ気がかりな点がある。
touga同様にCaym自身もまた一時期の記憶がほとんど欠落しているのだ。
ただしtougaとは違い、時期はAsherahに出会う前までのもの。
その間に会った相手で居るのかも知れないがこの場合はお手上げだ。
何故失われているかも判らず、解決のしようがない。
しかし、もしその時期に会った相手であれば確実に“敵”だ。
それだけは間違いが無いのだが……。
また、以前やっていた仕事の関係上、
一般的な旅人であればどこかで見かけていてもおかしくない。
しかし、これといった覚えもなく。完全にお手上げだ。
「まァ、思い出せねェもんは無理に考えたってしゃーねェわな」
言って、目の前のカップの酒を一口。
「暫くは監視しといたほうが良さそうだな…めんどくせェ」
そう言いながらも、目は真剣そのものだ。
以前、胸騒ぎがしていたのにもかかわらず、
何も行動しなかった結果、tougaやLeraieが大怪我をした。
自分が怪我をする分には“いくらでも良い”
また失敗を繰り返したときにもっと悪い状況になるかもしれない。
ソレが一番危惧されることだ。
ささやかな不安や疑問の欠片も、警戒するべきなのだ。

腕を組み考えを馳せる。
じっと静かに見つめる先は机の上の蝋燭。
小さく揺らぎ、吹くだけで消えてしまうその炎へと
守らなければならないものの姿を重ねているようだった――――。
ソファーでtougaが少しばかりうとうとしているところへ
研究の休憩と出てきたLeraieがやってくる。
休憩時以外はほとんど研究室に籠もっているために
こうやってまともに顔を合わせるのは久し振りな気がする。
「暖炉の前で寝ると、体調崩しますよ」
少し微笑みながら声を掛け
Leraieも向かい合うようにソファーに腰掛けた。

ばつの悪そうな表情を浮かべるtouga
「ちょっと考え事してたら眠くなっちゃって」
言ってあくびを一つ噛み締めるtougaへと
僅かに首を傾げて何かあったのかと視線で問いかける。
「たいした事ではないんだけど」
話すほどの事だろうかと少し思案してから言葉を続ける。

「数日前にCaymを町中で見かけた―――気がする」
「気がするとは?」
「はっきりそうだと言える自信も根拠も無いの。
遠目に見ただけで装備も違ったし、似た雰囲気の他人かも。
種族も同じだと思うけど…DarkElf自体珍しい訳ではないし」
tougaは目を伏せて光景を思い出していく。
遠めに見えた後姿、背丈、髪や肌の色、武具類…。
似ているといえば似ているが、すべてそこまで珍しい物ではない。
根拠とするにはあまりに弱い理由だ。

「確かめたくて追いかけようとしたんだけど、
少し目を離した隙に見失っちゃって。
それ以来見てないから、ただの旅行者だったのかもしれないし…」
その言葉にLeraieの表情が僅かに曇る。
“追いかけようと”?
危険かどうかも判らない相手を。
気持ちは判るのだが、少々無謀な行動だ。
それにCaymが戻れば真っ先にLeraieやSitriに声を掛けるはずだ。
今のところ出かけて以来Caymを見ていない。
良く似た他人である可能性の方が高い。
「確証がなければ、似ている相手でも近寄らないのが賢明です。
どんな相手なのか判りませんし、人攫いや盗賊の類だったらどうするんです」
「あっ…。ごめんなさい、そこまで考えてなかった」

そうだろうな。とLeraieは内心苦笑した。
危機意識の薄さは前からだったが、
いつかそれで大事に─── 一度なっては居るが ───巻き込まれてしまうような気がする。
小さくため息をつき、小さく出来ていた眉間の皺を緩めると
苦笑を浮かべ。
「程々にしてくださいね…?」
「……気を、つけます……」
言ってとても気まずそうにtougaは目を逸らすのだった。
その後久しぶりに2人でゆっくりと雑談を交わし
tougaが眠気に負けてそのままソファで寝込みそうになったため
2階の寝室へとLeraieが肩を貸して連れて行った。
久しぶりにゆっくり2人で話せたというのがよっぽど嬉しかったのか
笑みを浮かべたまま、おやすみと言ってtougaはすぐに睡魔に呑まれていた。
手のかかる人だな…とLeraieは内心思いながらも掛け布団をかけて
静かに部屋を後にしエントランスホールへと降りてきたところ
玄関扉が開き、外の冷たい空気と共にCaymがちょうど帰宅してきた。
大きな怪我もなく五体無事なようだ。“当然といえば当然”なのだが。

「おかえりなさい。思ったより早かったですね」
「ああ。特に妨害も無かったからな」
Caymは軽く肩や首を動かし、疲れをほぐして見せるが
軽い倦怠感が残り続けている。
体力には自信があるCaymだったのだが
流石に連日動いていたせいで精神的な疲れも溜まっているようだ。
とはいえ、Gateを閉じる仕事自体はかなりスムーズに行えた
正直なところ、これはかなり予想外な結果だった。
「妨害が無いところをみると、やはりあえて此方を放置しているという事でしょうね」
「だな。1人の所を狙いに来ても良いもんだが監視されてる気配もない」

何か理由があって動けないのか。
疑問が募るが答えが判る人間がこの場に居る訳でもない。
今は脅威になるものを一つずつ片付けていくしかないだろう。
ふむ、と少し悩んだ様子のLeraieだったが
もう一つ気がかりを思い出し、話を切り替える。
「――――そう言えば、貴方、
数日前にこちらに戻って来たりしていないですよね」
「帰ってきてねェな。何かあったか」
Caymへかいつまんでtougaの話を伝える。
「俺と似てる奴なぁ…遠目に見ただけなんだろ?」
「ええ。本人も別人かもしれないと言ってましたが」
「DarkElfなんて珍しい訳でもねーしなぁ…」

遠目に見ても雰囲気が近かったのだろうか。
内容だけで言えばそこまで気にするような事柄ではない。
Caym自身にすぐ浮かぶ相手の覚えはないし、
今の情報だけでは“他人の空似”と言うほかない。
「貴方の方で何か気付いたら俺に。
特に問題はなさそうですが、用心に越したことはないでしょう」
「ああ。そうする」
Leraieと別れ自室へ入り、
Caymは一人ソファに腰掛けながら考え込む。

自分に似ている?
考えても答えが出るとは思えなかったのだが
一つ気がかりな点がある。
touga同様にCaym自身もまた一時期の記憶がほとんど欠落しているのだ。
ただしtougaとは違い、時期はAsherahに出会う前までのもの。
その間に会った相手で居るのかも知れないがこの場合はお手上げだ。
何故失われているかも判らず、解決のしようがない。
しかし、もしその時期に会った相手であれば確実に“敵”だ。
それだけは間違いが無いのだが……。
また、以前やっていた仕事の関係上、
一般的な旅人であればどこかで見かけていてもおかしくない。
しかし、これといった覚えもなく。完全にお手上げだ。
「まァ、思い出せねェもんは無理に考えたってしゃーねェわな」
言って、目の前のカップの酒を一口。
「暫くは監視しといたほうが良さそうだな…めんどくせェ」
そう言いながらも、目は真剣そのものだ。
以前、胸騒ぎがしていたのにもかかわらず、
何も行動しなかった結果、tougaやLeraieが大怪我をした。
自分が怪我をする分には“いくらでも良い”
また失敗を繰り返したときにもっと悪い状況になるかもしれない。
ソレが一番危惧されることだ。
ささやかな不安や疑問の欠片も、警戒するべきなのだ。

腕を組み考えを馳せる。
じっと静かに見つめる先は机の上の蝋燭。
小さく揺らぎ、吹くだけで消えてしまうその炎へと
守らなければならないものの姿を重ねているようだった――――。
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